そして、十日ばかりたちまちすぎてしまいました。
その間、寺の掃除もしたり、いろいろ手伝うことでした。
そのうち母のことが思われて、人木は和尚さんにいとまごいをすることになり、そこで、たのまれたことを聞いてみました。
「和尚さん、私がここに来る途中に一軒家があって、そこの亭主から白菊の花が今年は咲かんがどういうわけか、和尚さんに聞いてきてくれということでした。」
「うん。その花ならやすいことじゃ。咲くときは咲くわい、こういえばよろしい。」
「和尚さん、それからまた一軒家に泊ったところが、娘がものをいわんがどういうわけかきいてくれということでした。」
「それもかんたんじゃ。いうときはいうじゃろう、といいなさい。」
「和尚さん、もう一つおしえて下さい。大きな池の大蛇が天竺に登れないがどういうわけか聞いてくれということです。」
「それもかんたんなことじゃ。その大蛇はサンゴスの玉という玉を人間の手に渡せばすぐ天竺に登れるといいなさい。」
こうして三つの難題をみごとにといてもらった人木は、喜び勇んで帰って行きました。
池まで来ると、大蛇が真赤な目を光らせて、特ちかまえています。
「たのみは聞いてきたか。」
「はい、はい。大蛇さん、聞いてきましたからわたしを向う岸まで渡して下さい。渡してくれたらいいましょう」
そこで、大蛇はまた人木を角と角との間に乗せて、向う岸へ渡しました。
「さあ、渡したぞ。早くおしえてくれ。」
「それではおしえましょう。大蛇さん、あんたはサンゴスの玉という玉を持ってあるそうじゃが、それを人間の手に渡せばすぐ天竺に登れると和尚さんがいいましたよ。」
人木がいい終ると、大蛇はがぼうっと水音を立てて池の底にもぐりこみました。
すぐまた現われて、光り輝く美しい一つの玉を人木に渡しました。それはサンゴスの玉でした。
すると、とつぜん、黒雲がわき起って、大蛇はその雲の中にはいって、くるくるくると舞いながら、たちまち天に登っていきました。
大蛇からサンゴスの玉をもらった人木は、大喜びで一軒家までやってきました。
「亭主さん、今でした。」
「それはごくろうでした。ところで娘のことは聞いてくれましたか。」
「はいはい。聞いてきましたよ。娘さんはものをいうときはいうじゃろう、ということでしたよ。」
その晩はそこに泊りました。ところがあくる朝、娘が、
「昨日はおせわになりました」
とりっぱにものをいったのです。亭主はとんと喜んで、
「おやおや、ほんとに娘がものをいうた。これはあんたのあかげじゃ。ありがたい。ところで、あんたはバキイ(婆貴)はいますか。」
「いや、まだひとりもので母と二人くらしています。」
「ほいなア、この娘をもろうてくれんか。」
そこで、人木は片手にサンゴスの玉を、片手に娘の手をにぎって、大喜びで帰って行きました。
やがてまた前の一軒家につきました。すると、亭主が、
「わたしがたのんだことは聞いてくれましたか。」
「はいはい。聞いてきましたよ。白菊の花は、咲くときは咲くわい、といいましたよ。」
その晩はその家に泊りました。
翌日、夜が明けてみると、白菊がいくつもきれいに咲いているのです。亭主はたいそう喜んで、
「これはあんたのあかげじゃ。今まで咲かんのがこんなにきれいに咲いた」
といって、一枝切ってくれました。
人木はサンゴスの玉と娘の手をしっかりにぎり、娘は白菊の花を胸にだいて、二人は喜び勇んでわが家にかえりました。
「おっ母ん、今じゃったよ。ほア、サンゴスの玉に、花嫁と白菊の花をもろうてきた。」
母はたいへん喜んでくれました。
それから、三人仲よく力をあわせて働いたので、今まで貧乏であった人木はいつのまにか金持になって、よかくらしをしましたそうじゃ・・・。
以上、屋久島ツアーで人気のある屋久島の民話「サンゴスの玉」でした。