サンゴスの玉 2
「そんなにおまえがいうならしかたはなか。行たてきなさい。」
翌日、人木は山寺めざして出かけました。山を一つ越えると途中に、一軒家がありました。
その日はもう夕暮れになっていましたので、その家に泊めてもらいました。亭主が、
「あんたはどこに行きなさるか。」
と聞くので、人木が、
「わたしはずっと奥山の山寺に行くところです」
と答えると、
「そいなら、ぜひ和尚さんに聞いてきてもらいたいことがあります」
といいました。
「それは何ですか。」
「じつは、毎年咲いていた白菊の花が今年は咲かんので、どういうわけか聞いて下さい。」
「聞いてきましょう。」
人木は亭主のたのみをひきうけて、翌朝そこをたちました。里をすぎ山を越えて行くと、また日が暮れました。
ちょうどつごうよくまた一軒家がありましたので、そこに泊めてもらいました。
そこの亭主が、また聞き按した。
「あんたはどこに行きなさるか。」
「わたしは奥山の山寺に行くところです。」
「それでは、私のたのみを聞いて下さい。うちの娘がものをいわんようになったが、どういうわけか和尚さんに聞いてきてほしい。」
「よろしい。聞いてきましょう。」
夜が明けると、人木は朝早くその家を出て山寺へ急ぎました。
ところが途中に、大きな池があって、その池を渡らないと向うへ行けません。
人木が困ってしまっているとき、突然、池の水がさかまいて、そのうずまきの中から角の生えた大蛇が、恐ろしい姿で人木におそいかかってきました。
このとき人木がいいました。
「大蛇さん、大蛇さん、ちょっと待ってくれ。わたしを食べるのはやすいことじゃ。わたしはどうしても山寺に用があるので、その帰りにわたしをのんでくれ。」
「そうか。じつはおれはどうしても天竺に登れんが、どうしたわけか山寺の和尚さんに聞いてくれ。
そうしたら、おまえをのまないよ。」
「よろしい。聞いてきましょう。それでは、大蛇さん、わたしを向う岸へ渡してくれ。」
そこで、人木は大蛇の角と角の間に乗って、ぶじに向う岸に渡りました。
人木は、どんどん、どんどん急いで、とうとう山寺に着きました。
和尚さんは人木が来ることをちゃんと知っていて、ごちそうを作って待っていました。
「ああ来たか。ごくろうじゃった。さあ早く上ってゆっくりしなさい。」
人木は山寺に上って、和尚さんからたいへんなごちそうにあいました。